闇の中の光 - マリアの置かれていた状況

御 言 葉

 しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。

   ルカによる福音書 2:19


 ルカによる福音書によりますと、ベツレヘムの家畜小屋にイエス様はお生まれになり、飼い葉桶の中に寝かされていました。そこへ、天の使いの言葉を聞いたと言って、羊飼いたちが訪ねてきました。彼らの訪問をマリアは喜んだでしょうか。それは分かりませんが、彼女の置かれていた状況が貧しさそのものだということは確かです。人口調査のためにそれこそ家畜のように追い立てられて長い旅をし、疲れ果てても泊まる宿もなく、家畜小屋です。そして、当初天使ガブリエルからの祝福の言葉が彼女にありましたが、今は何もありません。当時、律法を知らない連中ということで世の中から卑しめられていた羊飼いが訪問してくれているだけです。マリアは貧しさ、惨めさ、淋しさの中で、自分は不幸な者だと嘆いていたでしょうか。いいえ、羊飼いの言葉をよく聴き、あれこれ思いめぐらしていたのです。そして気が付いたはずです。ローマ帝国の圧政の下、世の中は暗い。自分の置かれている状況も貧しさの極みです。ですが、天使ガブリエルの約束は、羊飼いの言葉に確かに裏付けされています。圧政の下にあって世の中あれこれ騒がしく混乱の中にあっても、運悪くこの私が貧しさの極みに置かれていても、神の業は進んでいるのです。人の目から見て、どのような絶望的な状況下にあっても、神の業は確かに進められていく。そしてその業にこの私も参入させられている。神を信頼している限り、希望は無限です。このことにマリアは気が付き、力を得、これから先も前へ前へと歩みます。私たちがまったく暗闇の中に置かれていると思っていても、神の業は確かに進んでいく。そういう意味で、「クリスマスおめでとう」なのです。

 説教概要一覧へ