王の役割

御 言 葉

 見よ、このような日が来る、と主は言われる。わたしはダビデのために正しい若枝を起こす。王は治め、栄え、この国に正義と恵みの業を行う。

       エレミヤ書 23:5


 イスラエルの民は元来王政を拒否してきました。彼らにとって一番大切なことは、神に導かれて奴隷の家(エジプト)から解放されて自由になり、約束の地が与えられたという救いの事実でした。神をエジプトからの解放者とする告白がいつの時代にも繰り返されたことからも分かるように、イスラエルの自己理解は神の解放のわざにもとづいているのです。ですから、生活の中心に置かれるべきものは当然神であり、彼らにとって神とは別の支配者がいてはならないのです。

 ですが、紀元前11世紀の後半に至って、隣国ペリシテが強力な中央集権国家であり、その軍事力に対抗するために王政に移らざるを得ませんでした。ただし、イスラエルの民の王の仕事は、あくまで神の思いを現実社会に実現することに変わりありませんでした。ともにエジプトから解放された者たちのうちの一人として民に奉仕するのです。しかし、実際の王は自分の財産と地位を保つことに懸命で、理想像から遠く離れていました。

 神は長い歴史の中で人々に裏切られ続けました。裏切られた神はそれでも民を捨てずに、ご自分のひとり子をこの世に遣わします。彼は王のすべきことを果たします。ですから彼は王なのですけれども、十字架を担ぐ王でした。

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