救い主の予告

御 言 葉

 見よ、このような日が来る、と主は言われる。わたしはダビデのために正しい若枝を起こす。王は治め、栄え、この国に正義と恵みの業を行う。

   エレミヤ書 23:5


 エレミヤはユダ王国が北の大国バビロニア帝国に滅ばされる時期に登場した預言者です。彼は祖国を滅亡の危機に追い詰めた人々の弛緩した暮らしぶりをしっかりと見つめ、その現実をありのままに受け取り、大いに反省し、そこから立ち上がるようにと人々に訴えます。このような彼ですから、現実から目を逸らして、やたらと希望的観測を述べる他の預言者を攻撃します。当事者に向かって好ましくない事実をありのままに述べる人は必ず嫌われます。エレミヤは人々から疎まれ孤立無援ですが、それでも現実から逃れず神からいただいた言葉を伝え続けます。それが彼の真実の生き方だったのです。
 しかし、だからと言って、一本調子に祖国の罪に対する神の審判だけを叫んだ滅亡の預言者ではありませんでした。彼の心は柔軟であり、現実を真実に直視することにより、それを超えて先を示すいま一つの現実、人間の現実に対してそれを超える神の現実を見ることが出来るようになったのです。現実の苦しみや戦いを経たからこそ初めて芽生え、育つことが出来た希望を述べることが出来るようになったのです。彼もあのイザヤと同じく、しかし全く異なった厳しい状況の下で現実を直視して、新しい救い主の誕生を予告したのです。

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