ゴルゴタにて

御 言 葉

 そこを通りかかった人々は、頭を振りながらイエスをののしって、言った。「神殿を打ち倒し、三日で建てる者、神の子なら、自分を救ってみろ。」

   マタイによる福音書 27:39~40     


 アダムとエバが蛇に誘われて、善悪の知識の木から実を食べて以来、人間は、自分は世界の中央に立っている支配者であり、しかも自分の支配者でもあり、自分で自分を救う者と思い込むようになりました。それは自分で自分を救わなければならない者となったことでもあり、自己中心的に生きる者となったことでした。それがエデンの園以来の人間の歴史であり、私たち個人の生涯の歴史でもありました。しかし、そのような支配者となったはずですのに、私たちの日々は、なぜこのように思い煩いと恐れに包まれているのでしょう。なぜ私たちはいつも人を傷つけ自分自身を傷つけて、生きなければならないのでしょう。なぜ私たちの世界は、このように不安と絶望に充ち、いつまでも闘争と流血と抑圧が続くのでしょう。このような思い違いを続けてきた私たちのために、ただ一人自己中心的に生きなかった方、すなわち自分の外に中心を持つ者として生きた方が十字架を負って、最後までその生きる姿勢を貫いて、十字架の上で息を引き取られたのです。この方の犠牲によって、私たちは新しく生きる者となることができたのです。本来の人間らしく生きることが出来るようになったのです。

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